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選挙供託金訴訟判決(2019.5.24東京地裁)に対する見解 

 〜原判決は、選挙供託金制度の違憲性について判断を誤るとともに、審理を尽くしていない違法性がある〜

2019.6.2

片木淳 弁護士

(選挙市民審議会共同代表、元早稲田大学教授、自治省選挙部長)

 

1.判決は、公選法92条が「立候補者としての資格そのものを制限するものではない」から憲法44条条ただし書に「直接的に、、、、抵触するものではない」とするが、一方で、「現行の選挙供託金制度はこれらの選挙に立候補しようとする者に無視できない萎縮的効果をもたらすものということができ」、「立候補の自由に対する事実上の制約となっている」と断じている。 

であれば、公選法92条が憲法44条ただし書に「直接的に」ではなくとも、「実質的に」抵触するということになるのではないか。 

したがって、「その立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合」あるいは,「国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白である」場合に該当するのではないか。 

 

2.判決は、「選挙供託金制度が選挙制度の仕組みを構成し、 他の諸制度と調和的に運営される必要があるという同制度の位置付けを踏まえて、国会の裁量権に対して十分に配慮することが必要となる」とするが、「調和的に運営される」とはいかなる意味か、明確な説明がない。 

原告側の見解からすれば、それを廃止、又はその額を減額しても、なんら他の諸制度との齟齬をもたらすものではない。   

むしろ、そのように選挙供託金制度とその他の制度を連動させる考え方自体に問題があるのであり、この点、判決には審理不尽の違法がある。 

選挙公営の財政上の必要性から、選挙供託金制度を云々するのは、本末転倒である。 

 

3.「選挙供託金制度の憲法適合性については、最高裁平成17年9月14日大法廷判決に準じて、厳格な審査基準が用いられるべき」であるとの原告の主張に対し、判決は、上述の「他の諸制度と調和的に運営される必要がある」等の選挙供託金制度に関する独自の理解の上にたって、同最高裁判決は「選挙供託金制度の憲法適合性を判断する基準となるもの」ではないとしたが、その理由も不明瞭である。 

1に述べたように、選挙供託金制度が「立候補の自由に対する事実上の制約となっている」と認めたのであれば、立候補の自由という基本的人権を侵害するものとして、厳格な審査基準を適用すべきである。 

 

4.判決は、被告側の説明をうのみにして、選挙供託金制度は、「国政選挙において売名目

的や選挙妨害の目的等、真に当選を争う意思のない候補者の濫立による弊害を防止する目的で設けられているものであり、その立法目的は正当なものである」とする。 

  しかし、資力はないが、「真に争うつもりの候補者」が一人でも出てきた場合には、選挙供託金制度のために、立候補が事実上不可能となってしまう、もしくは委縮させてしまうのであるから、「泡沫候補」を排除しようとして、かえって正当な候補者を排除してしまう結果となるのである(本訴訟の原告がまさにそれに当たる)。 

さらに、「泡沫候補」かどうかは、有権者が判断すべきことであるとともに、原告側は、どうしても選挙前にふるいにかけたいのであれば、一定の有権者の推薦制を導入することによれば可能であると主張しているのであるから、その点についても、審理不尽の批判を免れない。 

 

以上、原判決は、選挙供託金制度の違憲性について判断を誤るとともに、審理を尽くしていない違法性がある。 

 


選挙立候補を“妨害する”悪しき制度  BIZジャーナル 2019/5/23

一般国民の選挙立候補を“妨害する”悪しき制度「供託金」違憲訴訟で画期的判決か…

 

・最大の政治勢力である「無党派」が排除されている

・自民党からも「供託金は高すぎる」という声

 

選挙供託金違憲訴訟について、分かりやすくまとめられています。

ビジネスジャーナル

https://biz-journal.jp/2019/05/post_28005.html

 


東京新聞「供託金」の見直しが必要。司法の判断は?2019/4/19

4月18日(木)付東京新聞朝刊のコラム『特別報道部編集局南端日誌』欄で、供託金見直し問題が取り上げられ、司法はどんな判断をするのか、と5月24日に東京地裁「供託金違憲訴訟」の判決が言い渡されることになっていることが紹介されています。

 


特別報告会の紹介記事です。2018/12/23

1925年に普通選挙法とあわせて導入された供託金について、当時の有力な学者が「普(通)選(挙)の精神を蹂躙(じゅうりん)したもの」「制限選挙を復活させるもの」などと厳しい批判の声があったことなど、特別報告会での憲法学者 只野雅人一橋大教授のお話を紹介した記事が掲載されています。

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-12-23/2018122314_03_1.html


ビジネスジャーナルで記事にしていただきました。2018/12/12

「一般国民を政治から排除する供託金」文=林克明

https://biz-journal.jp/2018/12/post_25889.html


東京新聞「こちら特捜部」で紹介されました。2017/10/22


朝日新聞「天声人語」で紹介されました。2017/9/21朝刊


韓国では、すでに違憲判決が。

韓国の勝訴判決文

ダウンロード
20010719韓国判決.pdf
PDFファイル 378.0 KB

韓国では2001年にそれまでの高い供託金に対して、違憲判決が出されています。

大変格調高い判決文です。

日本語に翻訳してあります。

ぜひご一読ください。


【主文】 

1. 公職選挙及び選挙不正防止法第56条第1項第2号、第57条第1項第1号中、地域区国会議員選挙に関する部分、同条第2項中、地域区国会議員候補者の得票数が同条第1項第1号の得票数に達しない場合には寄託金が国家に帰属するという部分、第189条第1項ないし第7項は憲法に違反する。 

 

 2. 選挙はその過程を通じて国民の多様な政治的意思が表出される場であって、2落選する候補者をして結果的に「乱立候補」と見る制裁を行われないよう、寄託金返還の基準として得票率を使用することは、その基準得票率が有効得票数の微々たる水準でとどまっている場合であるべきだが、公選法第57条第1項、第2項は地域区国会議員選挙にあって候補者の得票数が有効得票数を候補者数で割った数以上か有効得票数の100分の20以上である場合でなければ寄託金を返還されず国庫に帰属することになるので、こうした基準は過度に高く、真摯な立候補希望者の立候補を遮っており、またいったん立候補した者で真摯に当選を意図した努力を尽くした立候補者まで選挙結果によって不当な制裁を行うことになり、特に2,3個の巨大政党の存在する場合、群小政党あるいは新政党の候補者が上記基準を充足することは困難になるから、結局候補の政治信念で機会を制約する評価をすることになるので、上記条項は、国民の被選挙権を侵害することになる。 

 

結論 

公選法第56条第1項第2号、第57条第1項第1号のうち、地域区国会議員選挙の得票数が同条第1項第1号の得票数に満たないときは寄託金を国家に帰属させるとする部分、第189条第1項ないし第7項は憲法に違反しており、公選法第146条第2項のうち「1人1票とする」部分は国会議員選挙において多数代表制と並行して政党名簿式比例代表制を実施しても別途の政党投票を許容しない限度にて憲法に違反する。



北海道新聞「異聞風聞」で紹介されました。2016/7/3